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7/09/2010

扉をたたく人 | The Visitor


一度見るだけで、すっかりこころに居座ってしまった、素晴らしい映画。

2007年制作の、アメリカ映画。扉をたたく人」(原題: "The Visitor")

公開当初わずか4館での公開が、口コミで全米270館にまで広がったという。

愛する妻が亡くなってから、すべてにこころを閉ざし、
孤独に生きる初老の大学教授、ウォルター。

ひょんなことから、シリア出身のタレク、その恋人のセネガル出身のゼイナブと出会い、
ジャンベ奏者のタレクにジャンベを教えてもらう。
ジャンベを頭ではなく、こころで叩くことを教えてもらう日々。
ウォルターの表情と声に、次第に笑顔と活気が満ちてくる。

そんな日々が、突如暗転する。

タレクが、些細な誤解から入管に拘置されてしまう…。
そこに、連絡がつかない息子を心配し、タレクの母、モーナが訪ねてくる…。


ウォルター役のリチャード・ジェンキンスはもちろんのこと、
タレク役のHaaz Sleimanが、とても印象的だった。
この映画の前半は、ジャンベの音と、彼の笑顔と人懐っこさが、
観ている人をぐんぐんとこの映画の流れに引き込んでいくように思う。

厚い雲が空を覆うばかりだった毎日に、明るく暖かい太陽の光が燦々と差し込んできて、
いつの間にか毎日青空になっているような、そんなタレクの存在。

後半は、アメリカ合衆国という移民の国が、
9.11以降変わってしまったその移民への接し方を、
妙な装飾なしに、現実からきっちりと切り取って、観ている人の目の前に真摯に差出してくれる。

入管に拘置され、
徐々に苛立が募っていくタレクが、とてもとても痛々しく、胸が詰まる。

タレクの母、モーナとウォルターの関係も、
大切に思う人が増えていくことで、人はその分だけ強くなっていくんだなと、
またここにも静かに感動する。

映画を観ながら、
「忙しい、忙しい」と、免罪符のように口にしていた日々の自分がよぎって、心が痛くなる。
そこから、自分を解き放っていくウォルターが、とても大切なことを、改めて教えてくれる。

すでに何度も見たけれど、また見たくなってしまった。
そんな、素晴らしい一本。

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